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LARGE-SCALE FITNESS CLUB

総合型フィットネスクラブ(スポーツクラブ)の開業

最初に押さえておきたいのは、検索でいう「スポーツクラブ」と街のジムは別物だということです。プール・スタジオ・マシンを集約した総合型クラブは、会員数で大きな固定費をまかなう装置産業に近く、ゼロから新設する形での個人開業は資本の壁から現実には限られます。手元の資金で開きたい人の多くが実際に開けるのは、もっと身軽な業態です。このページでは、大型クラブがどう稼ぐのか、新規開業がなぜ限定的なのか、大型を狙う場合の現実的な入り方、そして大型でない人にどの業態が向くのかを、設備を売る立場ではない中立の視点で整理します。

月会費
1万〜1.5万円
初期投資(目安)
数億円規模
会員規模
1,500〜3,000人
投資回収(目安)
7〜15年

監修: 山本貴大(店舗マーケティング専門家) / 公開日 2026年6月15日 / 数値は業界目安

スポーツクラブと街のジムは別の業態

開業を検索する人の多くは、スポーツクラブと街のジムを同じ意味で使っています。けれど、この2つは初期投資が一桁も二桁も違う別の業態です。検索結果に並ぶ「ジム開業」の記事はほとんどがマシン中心の小規模ジムを前提にしており、プールやスタジオを備えた総合型クラブの話ではありません。まずはこの規模の違いを並べて確認します。

比べる軸 総合型クラブ(スポーツクラブ) 小規模ジム
主な設備 プール・スタジオ・マシン・サウナ・浴室などを一施設に集約 トレーニングマシンが中心。プールやスタジオは持たないことが多い
床面積の目安 300〜1,000坪規模 数十坪〜100坪程度
初期投資の目安 数億円規模(プール併設はさらに大きい) 数百万〜数千万円
運営の主体 資本力のある法人が中心 個人・少人数の事業者でも始めやすい
会員規模 1,500〜3,000人 数百人規模から成り立つ
回収の時間軸 7〜15年の長期回収を前提 数年での回収を狙いやすい

床面積・初期投資・会員規模は施設の設備内容や立地で大きく変わる業界目安です。

大型クラブは多機能を月会費1本に束ねて稼ぐ

総合型クラブの強みは、プール・スタジオ・マシン・サウナを一施設にまとめ、月会費1万円台で「ここに来れば何でもできる」価値を出せることです。1人ずつの単価で稼ぐ小規模ジムと違い、1,500〜3,000人という大きな会員基盤を抱え、その会員数で家賃・人件費・設備維持といった大きな固定費を割る形で成り立ちます。会員数が固定費の分岐点を超えて初めて利益が出るため、退会をどれだけ抑えられるかが経営の生命線になります。

収益のイメージ(モデルケース・特定企業の数値ではありません)

会員数(中規模クラブのモデルケース)
約2,000人
月会費(1人あたりの目安)
約12,000円
月会費ベースの売上イメージ
約2,400万円/月
上乗せする収益
スクール・物販・パーソナル・短期プログラムなど

さらに、スイミングスクールや各種レッスン、物販、パーソナル指導といった月会費以外の収益を重ね、会員1人あたりの利用額を底上げします。設備が多いほど提供できる選択肢が増え、退会の引き止めにもつながる一方、その設備を維持する固定費も重くなる。多機能であることは収益の幅とコストの重さを同時に抱える構造だと言えます。

新規での大型開業が限られる理由を市場データで読み解く

フィットネスクラブ業の事業所は全国で5,903、売上高はおよそ5,040億円にのぼります。このうち個人からの収入が約88%を占め、会員から月々お金をいただくBtoCが中心の市場です。コロナ禍で売上は大きく落ち込みましたが、2019年を100とした売上高指数は2020年の67を底に、2024年には87まで回復してきました。検索結果に並ぶ「市場拡大=開業のチャンス」という表現は、この回復の流れを指していることが多いものです。

事業所数

5,903

市場規模

約5,040億円

個人収入比率

約88%

売上高指数(2024)

87/100

ただし、回復しているのは市場全体であって、大型を新設しやすくなったという話ではありません。プール併設の大型施設は初期投資が数億円規模に達し、損益分岐となる会員数も大きいため、回収には7〜15年という長い時間がかかります。この資本負担の大きさから、新規に同規模をゼロから建てる動きより、既存施設を引き継いだり運営だけを受託したりする入り方が目立つのが実情です。市場全体の動向や種目別の需要は市場データでも確認できます。

それでも大型を狙うなら、新設以外の入り方がある

「個人がいきなり大型を新設する」以外にも、大型施設の運営に関わる道はあります。資本の壁を真正面から越えるのではなく、回避したり段階を踏んだりする入り方です。

01

既存施設を引き継ぐ(M&A・事業承継)

稼働中のクラブや退店予定の施設を引き継ぐ入り方です。建物・設備・会員基盤がすでにあるため、ゼロから同規模を新設するより立ち上がりの不確実性を抑えられます。一方で、設備の老朽度・会員の継続率・引き継ぐ債務の精査が要になります。

02

施設の運営だけを担う(運営受託・指定管理)

建物を自前で持たず、自治体や民間施設の運営を受託する入り方です。公共のスポーツ施設では指定管理者として運営する例があります。大きな初期投資を抱えずに大型施設の運営に関われますが、契約期間や仕様が発注者側に握られる点を見込んでおきます。

03

小規模・特化型から段階的に広げる

24時間ジムやスタジオなど、固定費の軽い業態で実績と資金をつくり、商圏や資本が整ってから規模を広げる道です。いきなり大型を新設するより、自分の運営力と財務体力を確かめながら進められます。

大型は広域の商圏とアクセスが前提になる

小規模ジムが徒歩圏の住民を狙えるのに対し、1,500〜3,000人の会員を集める大型クラブは、商圏人口10万〜30万人と十分な駐車場・アクセスが前提になります。車で通える広域から会員を引いてくる業態なので、出店の判断は「その商圏に大型を支えるだけの需要があり、なおかつ競合で埋まっていないか」を見極めることが中心になります。

参考として、フィットネスクラブ事業所の供給密度は全国平均で人口10万人あたり4.68件です。県によってこの密度には差があり、密度が低い地域は供給に余地が残っている見方もできます。ただし県という単位は粗く、実際の出店は市区や駅勢圏といった商圏単位で需要と供給を読む必要があります。県の数字だけで「空いている/埋まっている」と判断しないことが大切です。

供給密度は令和3年経済センサス(2021)の事業所数を2020年国勢調査人口で割った概算値です。

大型でないなら、どの業態が現実的か

ここまで読んで「自分が開きたいのは数億円規模の大型ではなさそうだ」と感じたなら、それは遠回りではなく出発点が定まったということです。手元の資金と狙う客層に合わせて、無理のない規模の業態を選ぶほうが立ち上がりは現実的になります。

どの業態が自分に合うかは、用意できる資金と狙う客層から逆算するのが近道です。業態一覧で、各業態の開業資金や利益率の目安を見比べられます。

開業の進め方・資金を確認する

業態の選び方から事業計画・物件・資金調達までの全体像は、開業ガイドと資金・補助金のページにまとめています。

よくある質問

Q. 検索でいう「スポーツクラブ」と街のジムは同じものですか?
同じ言葉で語られますが、規模はまったく違います。プール・スタジオ・マシンを集約した総合型クラブは初期投資が数億円規模で、運営の主体も資本力のある法人が中心です。一方、街のジムはマシン中心で数百万〜数千万円から始められます。「スポーツクラブ 開業」で出てくる記事の多くは後者の小規模ジムを前提にしている点に注意してください。
Q. 総合型フィットネスクラブは個人で新規開業できますか?
プール・スタジオを備える大型施設をゼロから新設する形での個人開業は、資本の壁から現実には限られます。大型を狙うなら、既存施設のM&Aや運営受託、小規模からの段階拡大といった入り方が現実的です。個人で手元から始めたい場合は、24時間ジムやパーソナルジムなど、初期投資を抑えやすい業態のほうが無理がありません。
Q. 大型クラブはどうやって利益を出しているのですか?
会員1,500〜3,000人規模を抱え、月会費1万円台で集めた売上から、家賃・人件費・設備維持といった大きな固定費をまかなう構造です。会員数で固定費を割るのが基本で、ここにスクール・物販・パーソナルなどの収益を上乗せします。1人あたりの単価で稼ぐ小規模ジムとは収益の組み立て方が異なります。
Q. 大型クラブの新規開業が限定的なのはなぜですか?
初期投資が数億円規模になりやすく、損益分岐となる会員数も大きいためです。市場全体はコロナ後に回復基調にありますが、それでも大型を新設できるのは資本力のある事業者が中心になりやすく、新規参入は同規模新設より既存施設の引き継ぎや運営受託という形をとりやすいのが実情です。

データ出典・注記

  • 事業所数5,903・市場規模約5,040億円・個人収入比率約88%は、経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」(2021/売上は2020年実績)にもとづきます
  • 売上高指数(2019年=100、2024年=87)は、経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」にもとづく指数です。回復の度合いを示す指標として扱い、絶対額の比較には用いていません
  • 供給密度(全国平均 人口10万人あたり4.68件)は、令和3年経済センサス(2021)の事業所数を2020年国勢調査人口で割った概算値です。県単位は粗く、実際の出店判断は商圏単位で行う必要があります
  • 月会費・初期投資・会員規模・回収期間・収益イメージは、業界の目安にもとづくモデルケースで、特定企業の数値ではありません。施設規模・立地で大きく変わります
  • ブランド名(コナミスポーツクラブ・セントラルスポーツ・ルネサンス・ティップネス ほか)は代表例で、各社の数値・店舗数・戦略を示すものではありません
  • 「新規参入が限定的」は市場構造の説明であり、特定企業の方針を断定するものではありません