MEDICAL REHAB (SELF-PAY)
自費リハビリ開業の地図|保険リハの“その後”を、医療に踏み込まずに担う
自費リハビリの開業は、理学療法士が独立する話というより、「保険リハの期限の後を受けとめる場」を作る話です。医療保険のリハビリには続けられる期間に区切りがあり、その後も身体づくりを続けたい人が行き場を探します。その受け皿になるのが自費リハビリです。だから判断の中心になるのは、どこまでが合法な運動支援でどこからが医療行為か、有資格者の稼働時間で売上をどう積むか、そして紹介でどう人に来てもらうか。この三つが、収益が成り立つかどうかの前提を決めます。このページは、その前提を一枚で見渡すための地図です。
- 1回単価(目安)
- 10,000〜20,000円
- 初期投資(施設型・目安)
- 1,000万〜3,000万円
- 売上の主役
- 有資格者の稼働時間
- 投資回収(目安)
- 3〜6年
監修: 山本貴大(店舗マーケティング専門家) / 公開日 2026年6月15日 / 数値は業界目安
目次
人が来る理由は、保険リハに“終わり”があるから
自費リハビリの存在理由は、利用者の側にあります。脳卒中の後遺症や整形外科の手術後など、医療機関でリハビリに取り組んだ人の多くは、保険のリハビリにいつか区切りが来ます。
発症からの期間など、保険のうえで続けられる範囲に限りがあるためです。区切りが来ても、もう少し動けるようになりたい、後退させたくないと感じる人は少なくありません。その人たちが、続けられる場所を探して行き着くのが自費リハビリです。
この需要の起点は、ほかのフィットネス業態とまったく違います。パーソナルジムやヨガが「健康になりたい・予防したい」という前向きな動機で人を集めるのに対し、自費リハビリの利用者は「保険リハを卒業したあとも続けたい」という事情を抱えてやって来ます。
だから集客も収益も、この「保険リハの後」という一点に引っ張られて設計が決まります。一般的な健康ニーズの延長で考えると、来る人もチャネルも噛み合いません。
この需要起点が決める3つの前提
- 合法性続けたい人を受けとめる場であって、医療機関の治療を肩代わりする場ではない。この線をどこに引くかが事業の生命線になります。
- 稼働有資格者が1対1で向き合う時間そのものが商品なので、売上の上限は人の稼働時間で決まります。
- 紹介来る人が事情を抱えているからこそ、広告より医療・介護の現場からの紹介が集客の柱になります。
治療と運動支援の境目を、自分で引けるようにする
「自費リハビリは違法ではないか」という不安は、検索でもよく見かけます。提供するのが治療そのものではなく自費の運動支援である限り、サービスとして成り立ちます。
大切なのは「やっていいか・いけないか」を誰かに判定してもらうことではなく、医療と運動支援の境目を自分で引けるようになることです。下表は、保険リハビリと自費リハビリを「どこまでが運動支援で、どこからが医療か」という軸で並べ直したものです。
| 観点 | 保険リハビリ(医療機関) | 自費リハビリ(運動支援) |
|---|---|---|
| 担い手 | 医療機関で、医師の管理下にある | 自費の事業者。医師の管理下にある治療ではない |
| 位置づけ | 診断・治療を含む医学的リハビリ | 治療そのものではなく、自費の運動支援・身体づくりの場 |
| お金 | 公的医療保険(自己負担あり) | 全額自費(1回1万円台〜) |
| 続けられる期間 | 発症からの期間など、保険上の区切りがある | 保険のような算定上の区切りはない(だから「その後」を担える) |
| 踏み込めない線 | — | 診断・投薬・医学的処置など医師の指示が要る行為には踏み込まない |
踏み越えてはいけないのは、診断・投薬・医学的な処置など、医師の指示が必要な行為です。「治す」「治療する」とうたわず、運動を通じた身体づくりの支援として範囲を言葉にします。理学療法士などの有資格者が関わる意味は、ここにあります。
身体の状態を踏まえた安全な運動の組み立てができるからこそ、運動支援の範囲で価値を出せます。逆に、知識のないまま医療の領域に踏み込めば、利用者の安全だけでなく事業の信頼そのものを失います。提供できる範囲は、関連する法令や専門職団体の最新情報を確認したうえで設計してください。
どの法律が、どこに線を引いているか
「違法かどうか」は感覚で決まりません。関わるのは主に次の法律で、それぞれ別のことを禁じています。
医師法 第17条
「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めています。
診断・投薬・医学的な処置は、医師以外には行えません。自費リハビリで踏み越えられない一番外側の線です。
理学療法士及び作業療法士法 第2条第3項・第15条第2項・第17条
理学療法士を「医師の指示の下に理学療法を行うことを業とする者」と定義し(第2条第3項)、資格がない人がこの名称を使うことを禁じています(第17条)。
禁じているのは名称の使用であって、運動指導そのものではありません。ただし医師の指示がない場では、この法律が定める理学療法士の業務としては整理しにくくなります。
柔道整復師法 第15条・第16条・第17条
医師である場合を除き、柔道整復師でなければ業として柔道整復を行えないと定め(第15条)、柔道整復師にも外科手術や薬品投与を禁じています(第16条)。さらに骨折・脱臼の患部への施術には、応急手当をする場合を除き医師の同意が必要です(第17条)。
接骨院を併設する場合や、骨折・脱臼・捻挫といった言葉に近づく場合に関わってきます。
医療法 第3条
疾病の治療をなす場所であって病院・診療所でないものに、病院・診療所と紛らわしい名称を付けることを禁じています。
施設名に「クリニック」「医院」「診療所」のような語を使うときは、この条文に触れないかを確認します。治療を想起させる名称も、所管に確認しておくのが安全です。
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 第1条・第12条
医師以外がマッサージ・指圧・はり・きゅうを業とするには免許が必要としています(第1条)。第12条はこれら以外の医業類似行為を業として行うことを禁じています。厚生労働省の通知では、あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復そのものは無免許であれば処罰の対象、それ以外の医業類似行為は人の健康に害を及ぼすおそれがある場合に禁止・処罰の対象という整理が示されています。
運動指導の範囲を超えて手技に寄るほど、この法律に近づきます。自費リハビリで最も注意が要る層です。
実務でいちばん見落とされやすいのが、真ん中の層です。理学療法士及び作業療法士法第15条第2項は、「病院若しくは診療所において、又は医師の具体的な指示を受けて」理学療法として行うマッサージについては、あん摩マツサージ指圧師等の法律の適用を除外しています。したがって、その条件に当たらない場面では、少なくともこの適用除外を当然の前提にはできません。
施設型や訪問型の自費サービスは、この条件を満たさないことが多くなります。理学療法士の免許を持っていても、その免許があん摩マツサージ指圧師の免許を兼ねるわけではありません。手技の比重を上げるほど、この論点に近づきます。
ただし「適用除外を前提にできない」ことと「違法である」ことは別です。実際に問題になるかは、その行為があん摩マツサージ指圧師等の法律にいうマッサージにあたるか、医業にあたるか、業として反復継続しているかで判断されます。名称ではなく、行為の内容・目的・態様で見られます。
だからこそ、提供するものを「運動の指導」として設計できるかどうかが、事業の成立を分けます。どこまでが運動指導で、どこからが手技なのかは、行為の内容と態様で判断されます。開業の前に、所管の保健所や、この分野に詳しい弁護士に、自分が提供する内容を具体的に示して確認してください。本ページの記述は法令の建て付けの整理であって、個別の適法性を保証するものではありません。
もう一つ、開いたあとの広告表現にも同じ線が引かれます。施設名に病院や診療所と紛らわしい語を使えないほか(医療法第3条)、「治る」「改善率◯%」「医師推奨」「地域No.1」といった表現や、施術前後の写真、体験談の強調は、厚生労働省のガイドラインや景品表示法の観点から問題になりやすい部分です。集客のページを作るときは、法令の線をサービス設計と同じ精度で引いてください。
施設を構える、訪問する、間借りする
同じ自費リハビリでも、どこで対応するかで初期投資の大きさがまるで変わります。入り口は大きく三つ。自費施設を構えるか、施設を持たず訪問するか、すでに人が集まる施設に間借りするか。自己資金の厚みと、医療・介護の現場に連携のあてがあるかで、どれが現実的かが分かれます。
自費施設を構える(施設型)
自分の屋号で専用の場所を持ち、内装・立地・必要な機器をそろえます。サービスを最も自由に設計できる一方、物件・内装・機器に初期投資が集まり、集客と運転資金もゼロから背負います。場所が信頼の看板になる分、立地選びが効きます。
初期投資:1,000万〜3,000万円台が目安
向きやすいのは:自己資金に余裕があり、地域の拠点として腰を据えたい人
施設を持たず訪問する(訪問型)
利用者の自宅などへ出向いて対応します。場所を持たないため初期投資をぐっと抑えられ、少資本の入り口になります。移動時間が1日に対応できる件数を縛るので、稼働の組み方と移動範囲の設計が収益を左右します。
初期投資:物件を持たない分、施設型より大きく下振れ
向きやすいのは:まず小さく始めたい・自己資金を厚く残したい人
既存の施設に間借りする(併設型)
整形外科・接骨院・パーソナルジムなど、すでに人が集まる施設の空き時間や一区画を借りて始めます。物件と一定の来店動線を間借りできるため、施設型より身軽に立ち上げられます。元の施設との役割・料金・時間のすみ分けが設計の肝になります。
初期投資:間借り条件しだいで施設型より軽い
向きやすいのは:連携先のあてがある・新規集客をゼロから起こしたくない人
多くの人が見落とすのは、訪問型と併設型なら少資本から始められる点です。施設を構える前に、訪問や間借りで利用者の手応えと紹介の流れを確かめ、軌道に乗ってから拠点を持つ、という順番も現実的です。どのスタイルでも、自分の資格・経験と連携先のあてから入り口を決めるのが先になります。
単価は高いが、一人が診れる時間には限りがある
自費リハビリの売上は、対応できるセラピストの人数 × 1日に回せる枠 × 稼働率 × 単価で決まります。商品は機器でも会員数でもなく、有資格者が1対1で向き合う時間そのものです。
だから、たとえ1回1万円台という高単価でも、人が増えない限り枠は増えず、売上には天井ができます。下表は、セラピスト2名・1日4枠・営業22日・稼働率6割・1回12,000円というモデルケースで、月商の目安を逆算したものです。
| 対応できる枠(セラピスト2名 × 1日4枠 × 営業22日) | 月 176枠 |
|---|---|
| 実際に埋まる割合(稼働率の目安 6割) | 月 約106回 |
| 1回(40〜60分)の単価 | 約12,000円 |
| 月商の目安 | 約1,272,000円 |
ここから家賃・水道光熱費・集客費を引きますが、最大のコストは専門職の人件費です。自分一人で対応するなら売上はそのまま自分の稼働時間で頭打ちになり、セラピストを雇えば枠は増える代わりに人件費が先に出ていきます。
だから回収のスピードを決めるのは、増やせる枠をどれだけ埋め(稼働率)、どれだけ続けてもらえるか(継続率)です。会員数を追う発想ではなく、限られた稼働枠を埋め切る設計が、この業態の核心になります。
新規は、広告より“あの人の紹介”から来る
自費リハビリの集客は、ほかのフィットネス業態とチャネルが違います。一般的なジムやスタジオはSEO・MEO・SNSで数を集めますが、自費リハビリで新規の中心になるのは、利用者・家族の口コミと、地域の医療・介護関係者からの紹介です。
検索だけで集めにくいのは、来る人が「保険リハの後をどうするか」という事情を抱えていて、信頼できる人から勧められて初めて足を運ぶことが多いからです。
医療・介護の現場とつながる
退院後の行き先を探す利用者に、近隣の病院・クリニック・ケアマネジャー・地域包括の窓口が情報を求めることがあります。自分のサービスの範囲と安全への配慮を正しく伝え、顔の見える関係を時間をかけて作ることが、安定した紹介につながります。
利用者と家族の体験を積み上げる
一人ひとりに丁寧に向き合った積み重ねが、家族の口コミや継続につながります。少席・高単価の業態だからこそ、一度の体験の質が次の紹介を生みます。派手な広告より、目の前の利用者の手応えを大切にする運営が、結果として集客の土台になります。
この集客構造は、立ち上げに時間がかかる代わりに、いったん信頼が回り始めると安定します。だから開業計画では、最初の数ヶ月で枠が埋まらない前提の運転資金と、どの医療・介護の現場とつながるかという連携設計を、最初から織り込んでおくことが大切です。
開業の進め方・資金を確認する
どの開業スタイルで始めるかが見えてきたら、事業計画・物件・資金調達の全体像に進みます。とくに訪問型や併設型は少資本から始められるので、創業融資や補助金とどう組み合わせるかで、立ち上げ期の資金繰りが変わります。開業の段取りと資金の選択肢は、それぞれのページにまとめています。
よくある質問
- なぜ自費リハビリに利用者が来るのですか?
- 医療保険のリハビリには、発症からの期間など保険上の区切りがあります。区切りの後も身体づくりを続けたい、回復に向き合い続けたいという方が、続けられる場所を探します。自費リハビリは、その「保険リハの後」を受けとめる場として選ばれます。健康づくりや予防が起点の一般的なフィットネスとは、来店の動機がそもそも違うのが特徴です。
- 自費リハビリは違法になりませんか?医療行為との線引きを教えてください。
- 提供するのが治療そのものではなく自費の運動支援である限り、自費リハビリ自体は成り立つサービスです。気をつけるべきは、診断・投薬・医学的処置など医師の指示が必要な行為には踏み込まない、という線です。「治す」「治療する」とうたわず、運動を通じた身体づくりの支援として範囲を明確にします。提供できる範囲は、関連する法令や理学療法士などの専門職団体の情報を確認したうえで設計してください。
- 開業のスタイルで初期投資はどれくらい変わりますか?
- 同じ自費リハビリでも、自費施設を構えるか・訪問型にするか・既存施設に間借りするかで、必要な資金が大きく変わります。施設を構えるなら物件・内装・機器に投資が集まり、業界の目安では1,000万〜3,000万円台が中心です。施設を持たない訪問型はそこから大きく下振れし、既存施設への併設は間借り条件しだいで身軽に始められます。どの入り口を選ぶかを、自己資金と連携先のあてから先に決めるのが現実的です。
- 1対1・高単価でも、なぜ売上に上限が出るのですか?
- 売上は、対応できるセラピストの人数 × 1日に回せる枠 × 稼働率 × 単価で決まります。会員を何百人も集める業態ではなく、有資格者が1対1で向き合う時間そのものが商品です。だから売上の上限は「人が増えない限り枠が増えない」という稼働時間で頭打ちになります。最大コストも専門職の人件費なので、枠をどれだけ埋めて続けてもらえるかが、回収のスピードをほぼ決めます。
- 集客はどうやって行うのが現実的ですか?
- 自費リハビリは、広告で一気に会員を集めるより、利用者・家族の口コミと、地域の医療・介護関係者からの紹介が新規の中心になります。一般的なフィットネスのようにSEO・MEO・SNSで数を取りにくい代わりに、信頼を積み重ねた連携が時間をかけて効いてきます。立ち上げ期は、どの病院・施設・専門職とつながりを作るかを集客設計の柱に据えるのが現実的です。
データ出典・注記
- 本ページで触れる法令は、いずれも e-Gov 法令検索で条文を確認しました(2026年9月5日)。医師法第17条「医師でなければ、医業をなしてはならない」、理学療法士及び作業療法士法第2条第3項(理学療法士の定義)・第15条第2項(病院若しくは診療所において、又は医師の具体的な指示を受けて行うマッサージの適用除外)・第17条(名称の使用制限)、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第1条(免許)・第12条(医業類似行為の禁止。厚生労働省の通知では、あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復そのものは無免許であれば処罰の対象、それ以外の医業類似行為は人の健康に害を及ぼすおそれがある場合に禁止・処罰の対象という整理が示されています)、柔道整復師法第15条・第16条・第17条(脱臼・骨折の患部への施術は、応急手当を除き医師の同意が必要)、医療法第3条(紛らわしい名称の禁止)。ある行為が「マッサージ」や「医業」にあたるかは、行為の内容と態様で判断されます。本ページの記述は法令の建て付けの整理であって、個別の適法性を保証するものではありません。開業前に所管の保健所やこの分野に詳しい弁護士へ、提供内容を具体的に示してご確認ください
- 1回単価・初期投資・回収期間・損益モデルの数値は、各社公開情報・業界誌・公的統計をもとに 2026年6月時点で集約した業界目安・モデルケースです。特定の事業者の実績を示すものではありません
- 開業費用の参考として、日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」の平均975万円・中央値600万円(自己資金22.9%・金融機関等借入67.9%)がよく引用されます。これは全業種(公庫融資先)の値で、自費リハビリに限定したものではありません。施設を構える施設型は上振れ、訪問型や併設型はこれより下振れする傾向があります
- 自費リハビリは医療行為・治療をうたうものではなく、自費の運動支援サービスです。診断・投薬・医学的処置など医師の指示が必要な行為には踏み込めません。提供できる範囲や資格の扱いは、上記の法令と、理学療法士などの専門職団体の最新情報で確認が必要です。効果には個人差があります
- 保険リハビリの期間の区切りなど制度の細部は、本記事では一般的な説明にとどめ、具体的な日数の断定は避けています。最新の制度内容は公的機関の情報でご確認ください