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KEIEI / オーナーの年収

ジム経営の年収に「平均」はない

「ジム経営者の平均年収」を調べると、300万円台から2,000万円まで、まるで違う数字が並びます。どれかが間違っているのではなく、業態・オーナー自身が現場に立つか・固定費の重さ・店舗数という4つの変数で、年収の桁が実際に変わるからです。このページでは、当社が業態別に検証した実額を横断で並べ、年収がどの変数で決まり、どこで1,000万円に届くのかを整理します。

雇われ
300〜400万円
独立オーナー(兼任)
約540〜690万円
多店舗化
約860万円〜
最大の変数
現場に立つか

監修: 山本貴大(店舗マーケティング専門家) / 公開日: 2026年7月14日 / 金額はモデルケースの目安で、収益を保証するものではありません

「ジム経営の平均年収」という問いが答えを出さない理由

ジム経営の年収を調べると、媒体ごとに数字がばらつきます。ある記事は300万円台と書き、別の記事は1,000万円を超えると書く。これは調査がいい加減だからではなく、「ジム経営」という言葉が、まったく違うビジネスをひとまとめにしているからです。

マンションの一室で、自分ひとりが客単価3万円のパーソナル指導をする店。数千万円を投じて機材を並べ、月会費7,000円で数百人を集める24時間ジム。この2つは、必要な資金も、売上の作り方も、オーナーの働き方も別物です。同じ「年収」という言葉で括っても、意味が重なりません。だから平均を探しても、自分の答えにはなりません。

意味があるのは、平均値ではなく「自分の年収がどの変数で決まるか」を知ることです。ジム経営の年収は、次の4つでほぼ説明がつきます。逆に言えば、この4つを自分の条件で置けば、平均を探さなくても自分の年収は試算できます。

年収を決める4つの変数

1. 業態の客単価と、売上の天井

パーソナルは客単価が高い代わりに、指導できる枠に上限があります。24時間ジムは客単価が低い代わりに、会員数の上限が高い。この「単価×どこまで積めるか」が売上の天井を決め、年収の上限を先に規定します。

2. 自分が現場に立つかどうか

最も効くのがこれです。オーナー自身が指導すれば人件費が浮き、その分が取り分になります。指導を人に任せて経営に専念すると、1店あたりの取り分は大きく下がります。同じ店でも、立ち方で年収は3倍変わります。

3. 固定費の重さ

家賃・人件費・リース・水道光熱費といった固定費は、会員が何人であっても出ていきます。売上を伸ばすより、固定費を軽くするほうが手元に残る額は素直に増えます。年収は売上の大きさでなく、固定費との差で決まります。

4. 店舗数

1店で取り出せる額には限界があります。年収1,000万円を超える多くは、1店の利益を厚くしたのではなく、店数を増やして積み上げた形です。ただし店数を増やすほど、自分は現場から離れ、1店あたりの取り分は薄くなります。

この4つのうち、業態は開業前に決まり、固定費は物件を決めた時点でほぼ固まります。開業後に動かせるのは、現場に立つかどうかと、店数を増やすかどうか。年収を上げたいという相談の多くは、実はこの2つの選択の話です。

業態別に見るオーナーの年収|同じ「独立」でも1.7倍の差

当社が業態ごとに収支から逆算した年収の目安を、横断で並べます。いずれも「雇われ」「独立して自分の店を持ち、自分も現場に立つ」「その上の段」という同じ物差しで見たものです。同じ独立でも、ヨガの1人運営が約400万円、キックボクシングの兼トレーナー型が約684万円と、1.7倍の開きが出ます。

0 200 400 600 800 1,000 ヨガ(1人運営) 400〜550 ピラティス(1人運営) 540〜720 パーソナル(兼任) 588〜864 キックボクシング(兼任) 204〜684 (万円)
業態別の独立オーナー年収レンジ(税引前・モデルケース)。キックボクシングのレンジが下に大きく伸びているのは、経営に専念して指導を雇うと1店の取り分が約204万円まで落ちるためです。業態だけでなく「どう立つか」で年収が動くことが読み取れます。
業態 雇われ 独立オーナー その上の段 年収を決めるもの
パーソナルジム 約300〜400万円 税引前 約588万円 多店舗化で約864万円 客単価が高く、オーナーが指導に立てば取り分は厚い。天井は自分が指導できる枠の数。
ピラティス 約300〜400万円 1人運営 約540万円 グループ制 約576〜720万円 年収の天井はリフォーマーの台数×枠。マシン投資の返済と並走する期間が長い。
ヨガ 約200〜400万円台 1人運営 約400万円 養成講座の併設で700万円超も 設備が軽く固定費は小さいが、コマ給とレッスン本数で頭打ちになりやすい。養成が抜け道。
キックボクシング 約300〜400万円 兼トレーナー 税引前 約684万円 経営専念だと1店 約204万円 年収を決めるのは設備でなく指導者個人の価値。現場を離れると1店の取り分が急落する典型。

表の業態名から、その業態の年収の内訳(会員数別の収支、客単価、天井の作り方)を詳しく確認できます。24時間ジムのように装置が重い業態は、会員数が積み上がるまで利益が乗らないため、開業からの年数で見え方が変わります。業態ごとの収益構造は業態一覧で、ジム経営全体で儲かるのかという総論はジム経営で扱っています。

年収を最も動かすのは「自分が現場に立つか」

4つの変数のうち、開業後に最も大きく年収を動かすのがこれです。オーナー自身が指導すれば、本来なら人に払う人件費がまるごと自分の取り分に変わります。逆に、指導を人に任せて経営に専念すると、その人件費が利益から引かれます。

当社のキックボクシングのモデルでは、この差が鮮明に出ます。オーナーが指導の中心に立つ兼トレーナー型なら税引前で約684万円。同じ店で、指導者を雇って自分は経営に回ると、1店から取り出せるのは約204万円まで落ちます。店の売上は変わらないのに、年収が3分の1近くになるわけです。

では現場に立ち続けるのが正解かというと、そうとも限りません。自分が指導する限り、売上の天井は自分の稼働時間で決まります。1日に指導できる枠は限られ、そこを超えて年収を伸ばすことはできません。しかも、自分が倒れれば売上はゼロになります。経営に専念するというのは、1店の取り分を薄くする代わりに、店数を増やして天井を外し、自分がいなくても回る形を作る選択です。年収1,000万円を超えていく人の多くは、どこかでこの切り替えを通っています。

判断の目安はシンプルです。1店の利益がまだ薄いうちに現場を離れると、人件費だけが増えて年収が沈みます。1店が十分に回り、次の店を出す資金と人が揃ってから離れる。この順序を逆にした失敗が、最も多く見られます。

雇われの年収はなぜ頭打ちになるのか

ジム経営の年収を調べる人の多くは、いま雇われる側にいます。勤務トレーナーやインストラクターの年収は約300〜400万円、ヨガなどコマ給の世界では200万円台も珍しくありません。問題は金額そのものより、なぜそこで止まるのかという構造です。給与の型を分けて見ると、天井のでき方が見えてきます。

正社員(固定給)

月給に賞与が乗る形。収入は安定しますが、指導の腕が上がっても給与テーブルの上限に当たります。店の売上が伸びても、その分が自分に返る仕組みになっていないことがほとんどです。

コマ給(レッスン1本いくら)

ヨガやグループレッスンに多い形。1本2,000〜5,000円程度が目安で、収入はレッスン本数に正比例します。1日に入れられる本数には身体的な限界があり、そこが天井になります。移動時間は収入になりません。

歩合・インセンティブ

売上や指名数に応じて上乗せされる形。頑張りが返る一方、店の集客力に自分の収入が依存します。会員を自分で連れてきているのに、その果実の多くは店に残ります。

業務委託(フリーランス)

店に所属せず、場所を借りて自分の顧客を持つ形。取り分は増えますが、社会保険や有給はなく、集客も自分の責任になります。独立の一歩手前の形です。

4つに共通するのは、自分が生み出した売上と、自分に返る収入が切り離されていることです。会員をひとり増やしても、単価を上げても、その差額は店に残ります。だから、指導の腕が上がっても年収は比例して上がりません。ここが「頑張っているのに増えない」の正体です。

独立すると、この関係が反転します。売上から経費を引いた残りが、そのまま自分の取り分になる。だから年収が伸びる余地は出ますが、同時に集客・家賃・空いた枠のリスクも全部自分に返ってきます。独立を考えるタイミングとしてよく挙がるのは、自分に指名で付いている会員がいて、その人たちが場所を変えても付いてきてくれる見込みがあるときです。集客をゼロから作らずに済むぶん、独立直後の谷が浅くなります。逆に、店の集客力で会員が付いているだけの状態で独立すると、その谷が深くなります。

インストラクターの「平均年収」が媒体ごとに違う理由

「インストラクターの平均年収」を調べると、媒体によってまるで違う額が出てきます。当社が2026年7月28日に主要な求人・転職メディアと養成校の記事を6本確認したところ、同じ職業の平均年収として240万円台から600万円台までの記載が並んでいました。額がこれだけ動くのは、それぞれが違うものを測っているためです。

このことは、外部の記事を比べる前に、厚生労働省のデータの中だけで確かめられます。職業情報提供サイト(job tag)の「スポーツインストラクター」のページには、在職者の年収が442万円と示され、その同じページに、ハローワークの求人賃金が月22.5万円と並んでいます。後者は新規求人が提示している月額で、賞与を含みません。単純に12倍すれば270万円ですが、これは「求人の提示額を1年分に置き換えるとこうなる」という換算にすぎず、平均年収として扱える数字ではありません。同じ省庁のサイトに、性質の違うこの2つが並んで公表されていること自体が、ひとつの平均値では実態を表せないことを示しています。

厚労省が公表している数字 何を測ったものか 賞与 対象
年収 442万円 在職者に実際に支払われた1年分の給与(きまって支給する現金給与額×12+年間賞与) 含む 事業所に雇われる一般労働者
求人賃金 月22.5万円 新規求人が提示した月額。採用の入口の額で、実績ではない 含まない これから採用される人
時間当たり 2,142円 一般労働者の1時間当たりの賃金(残業代も含む) 含む 雇われの常勤
時間当たり 1,687円 短時間労働者の1時間当たりの賃金 含まない パート・アルバイト

参考として、同じページでは平均年齢38.3歳、1か月の労働時間165時間、有効求人倍率1.17(令和6年度)、就業者数120,470人(令和2年国勢調査)が示されています。いずれも雇われて働く人についての数字で、独立した人の収入はここに含まれていません。

1. 賞与を含むか

442万円は賞与を含む1年分の実績、22.5万円は賞与を含まない月額の提示です。この違いだけで、同じ職業の数字が170万円以上ずれます。求人票の月給を12倍した額を「平均年収」として比べると、実態より低く見えます。

2. 在職者か、これから入る人か

賃金構造基本統計調査は、いま働いている人に実際に払われた額です。ハローワークの求人賃金は、これから採用する人に提示している額です。前者には勤続年数を重ねた人が含まれ、後者は入口の水準に寄ります。

3. 雇われだけか、独立を含むか

ここが最も見落とされます。賃金構造基本統計調査の対象は事業所に雇われる労働者で、業務委託で働く人や自分の店を持つオーナーは、はじめから母集団に入っていません。つまりこの442万円は「独立したらいくらか」の答えを含んでいません。

もうひとつ、統計の作りに由来する限界があります。job tag は統計データの留意点として、各職業に載せている統計の職業分類は必ずしもその職業だけを表したものではない、と明記しています。「スポーツインストラクター」という枠には、ヨガのレッスンを持つ講師も、マシンエリアで指導するトレーナーも、受付や清掃を兼ねるスタッフも入り得ます。だから、この442万円を自分の年収の見込みとしてそのまま使うことはできません。自分の数字に近づけるには、業態と、自分がどう立つかで分けて見る必要があります。

雇われ・業務委託・独立|同じ指導でも取り分の作り方が変わる

同じ指導をしていても、どの立場でやるかによって、お金の入り方と、上限を決めるものが変わります。年収の額を比べる前に、この3つの土台の違いを押さえておくと、求人サイトの数字と自分の見込みを混同せずに済みます。

立ち方 収入の源泉 社会保険・税 上限を決めるもの
雇われ(正社員・パート) 事業所が払う給与。賞与を含めた額面が、そのまま年収になる 社会保険は会社と折半、税は給与から天引き 給与テーブルと、担当できるクラスの枠
業務委託 1コマ・1セッションごとの報酬。単価は上げられる 社会保険料は全額自己負担、確定申告も自分で行う 自分で埋められる枠の数と、集客の責任
独立(自分の店を持つ) 売上から経費を引いた残りが取り分 全額自己負担。法人化すれば自分で決めた役員報酬が年収になる 業態の客単価と枠、固定費の重さ、店舗数

この表に金額を入れていないのは、立ち方によって金額の意味が変わるからです。雇われの442万円は事業所が払った給与、独立後の金額は売上から経費を引いた取り分で、並べても比較になりません。とくに業務委託は、単価を上げられる一方で枠がいくつ埋まるかが集客しだいのため、業態差も個人差も大きく、ひとつの相場では語れない段です。業態ごとの実額は、ヨガピラティスの年収ページで、コマ給の水準や枠の埋まり方まで含めて扱っています。

年収1,000万円について問われることも多いのですが、在職者の平均が442万円、平均年齢が38.3歳という水準を踏まえると、給与テーブルの延長線上に1,000万円を置くのは現実的ではありません。届くとすれば、指導の腕をさらに上げるというより、収入の作り方そのものを変える形になります。具体的には、客単価の高い指導で枠の価値を最大化するか、店数を増やして積み上げるか、養成講座などのストック収益を足すか。この3つの経路はこのページの「年収1,000万円に届く3つの道」で扱います。

自分の業態での実額を見たい場合は、パーソナルトレーナーピラティスインストラクターヨガインストラクターキックボクシングのトレーナーのそれぞれで、雇われから独立までの年収の積み上がり方を会員数と経費の内訳まで示しています。

雇われからオーナー、多店舗へ|年収はどう積み上がるか

年収の段は、おおよそ4つに分かれます。上の段に行くほど金額は増えますが、同時に背負うもの(資金・人・リスク)も増えます。金額だけを見て段を上がろうとすると、たいてい途中でつまずきます。

0 200 400 600 800 1,000 1,200 雇われ 300〜400 独立・1人運営 400〜690 人を雇う・グループ 570〜720 多店舗化 860〜1,200 (万円)
雇われからオーナー、多店舗までの年収の段(税引前・業態横断のモデル)。独立で一段上がり、その先を伸ばすには「枠を増やす(人を雇う)」か「店を増やす」かの選択が要ります。1人運営のまま上限を超えることはできません。

1. 雇われ(勤務トレーナー・インストラクター)

約300〜400万円

会社が払う給与。安定する代わりに、指導の腕が上がっても給与の上がり方には天井があります。ヨガなどコマ給の世界では200万円台も珍しくありません。

2. 独立・1人運営のオーナー

約400〜690万円

「売上−経費=自分の取り分」に土台が変わります。人件費が要らないぶん取り分は厚いものの、自分の稼働時間がそのまま売上の天井になります。

3. 人を雇う・グループ化

約570〜720万円

指導を分担して枠を増やし、売上の天井を上げる段。ただし人件費が乗るため、1人あたりの生産性が落ちると逆に取り分は薄くなります。

4. 多店舗化

約860万円〜

1店の利益を店数で積み上げる段。自分は現場から経営へ移り、採用と育成が仕事になります。年収1,000万円超の多くはこの形です。

年収が立つのは、損益分岐を超えてから

オーナーの年収は、会員数が損益分岐を超えたところから初めて生まれます。それまでは、売っても売っても固定費に消えます。ここを感覚で捉えていないと、開業直後の数か月で「思ったより残らない」と焦ることになります。

0万 50万 100万 150万 200万 250万 03060 損益分岐 33人 売上 費用 会員数(人) 月間(円)
固定費 月90万円・客単価30,000円・1人あたり変動費3,000円で試算。会員数33人を境に黒字化し、そこから先は増えた月会費の大半が利益に乗ります。(客単価30,000円・固定費90万円のパーソナルジムのモデル。損益分岐は約34人で、そこを超えた先の1人から利益が乗り始めます。33人までは、売っても固定費に消えて年収が生まれない世界です。)

図が示すとおり、損益分岐の手前と先では、会員1人の意味がまるで違います。分岐点までの1人は固定費を埋めるために消え、分岐点を超えた1人は、客単価から変動費を引いた分がそのまま利益として乗ります。年収を上げたいときに「会員をあと10人」と考えるより、「損益分岐まであと何人か」を先に把握するほうが、打ち手の優先順位を間違えません。

そしてもうひとつ、独立の年収には多くの場合、谷があります。会員はゼロから積み上がる一方、家賃は初月から満額で出ていきます。損益分岐に届くまでの数か月から1年ほど、年収は勤務時代を下回るどころか赤字になります。この谷を運転資金で越えられるかどうかが、年収の話にたどり着けるかどうかを決めます。開業時に固定費の数か月分を運転資金として確保しておく理由はここにあります。資金の組み立てはジム開業資金で扱っています。

年収までの逆算|業態別の月次シミュレーション

年収は、客単価と会員数から月商を置き、そこから経費を引いて12倍すれば逆算できます。下表は、当社が業態ごとのページで検証したモデルケースを、同じ物差しで横に並べたものです。業態ごとに「単価は高いが会員数が少ない」「単価は低いが会員数で積む」という違いがあり、似た年収に、まったく違う経路でたどり着くことが読み取れます。

業態(モデル) 月会費 会員数 月商 月の利益 年収の目安
パーソナルジム(1人運営) 25,000円 30人 約75万円 約49万円 約588万円
ヨガ(1人運営) 9,000円 約56人 約50万円 約33万円 約400万円
ピラティス(グループ制) 13,000円 120人 約156万円 約54万円 約648万円
キックボクシング(兼トレーナー) 11,000円 120人 約132万円 約57万円 約684万円
24時間ジム(会員数で積む) 8,500円 350人 約298万円 約68万円 約816万円

数字はモデルケースで、収益を保証するものではありません。金額そのものより、構造に注目してください。パーソナルジムは会員30人で約588万円、24時間ジムは会員350人で約816万円。年収の水準は近いのに、必要な会員数は10倍以上違います。前者は「高い単価の指導を、限られた枠で売る」仕事、後者は「安い会費を、数で積み、設備で回す」仕事で、日々やることがまるで違います。年収の額と同じくらい、どちらの働き方をしたいのかが重要な選択になります。各行の業態名から、会員数別の収支や天井の作り方といった詳しい内訳を確認できます。自分の数字で試すなら収支シミュレーターが使えます。

目標年収から逆算する|その年収に、会員は何人必要か

年収を目標から考えると、やるべきことが具体的になります。上のモデルを使って、年収500万円・700万円・1,000万円を得るのに必要な会員数を逆算しました。ここに、業態ごとの性格がはっきり出ます。

業態(モデル) 年収500万円 年収700万円 年収1,000万円 読み方
パーソナルジム 月会費25,000円・経費26万円 28人 34人 44人 差は16人。ただし1人で指導できる枠の上限に当たるため、44人は人を雇うか2店目が現実的な形になる。
ヨガ(1人運営) 月会費9,000円・経費17万円 66人 84人 112人 経費が軽いぶん少ない会員でも残る。ただし112人を1人で回すのは難しく、グループ化や養成が現実解。
24時間ジム 月会費8,500円・固定費約230万円 320人 339人 369人 損益分岐の約270人を超えると、増えた会員の会費がほぼ利益に乗る。49人の差で年収が倍近くまで動く。

とくに特徴的なのが24時間ジムです。損益分岐の約270人を超えたあとは、余剰のキャパシティがあるうちは、会員が増えても設備や家賃はすぐには増えません(混雑してマシンを足す、増床するといった局面では固定費も上がります)。そのため320人で年収500万円、そこから49人増えると年収1,000万円の水準に届きます。固定費の重い業態は、分岐点までが苦しく、その先で利益が伸びやすい構造だと言えます。逆にパーソナルは28人で500万円と早く届きますが、1,000万円に必要な44人を1人で指導しきることはできません。天井が会員数ではなく、自分の時間にあるためです。

つまり、同じ「年収1,000万円」でも、24時間ジムなら会員を49人増やす話、パーソナルなら人を雇うか2店目を出す話になります。目標年収を決めたら、その業態にとってそれが「会員を増やす問題」なのか「構造を変える問題」なのかを見極めてください。数字はモデルケースであり、収益を保証するものではありません。

年収を動かす4つのKPI|どれから手をつけるか

年収を上げたいとき、多くの人がまず新規集客を考えます。しかし効き方の順で言えば、集客は最後です。効く順に並べると、こうなります。

1. 継続率(解約率)

最も効きます。月会費のビジネスは、入会で増やすより解約で失うほうが速い。継続率が5%変わるだけで、1年後の会員数と年収は大きく変わります。新規集客に払う広告費より、既存会員を1か月長く留めるほうが安く効きます。

2. 稼働率(枠の埋まり方)

パーソナルやグループ制では、指導できる枠がどれだけ埋まっているかが売上を決めます。空いた枠は在庫として売れ残るのではなく、その時間ごと消えます。埋まっていない時間帯の値付けや、クラス編成の見直しが直接効きます。

3. 客単価

同じ会員数でも単価が1割上がれば、上がった分はほぼそのまま利益になります(固定費は変わらないため)。値上げは会員が離れるのが怖い施策ですが、提供価値と一緒に上げれば、年収への効きは会員を増やすより速い。

4. 会員数

損益分岐を超えた先の1人は、客単価から変動費を引いた分がまるごと利益に乗ります。ただし枠や設備の上限を超えて増やすことはできず、上限に近づくほど1人あたりの獲得コストは上がります。

継続率と稼働率は、今いる会員と今ある枠で改善できるため、お金をかけずに年収に効きます。客単価は勇気が要りますが効きは速い。会員数を増やす集客は、広告費という新しい支出を伴うため、前の3つを整えてから回すほうが利益は残ります。集客の設計はジムの集客で扱っています。

年収1,000万円に届く3つの道

1店で現場に立ち続けたまま1,000万円に届く形は、多くありません。自分の稼働時間が天井になるからです。現実的な道は、次の3つに整理できます。どれを選ぶかで、必要な資金も、日々の仕事の中身も変わります。

1. 客単価を上げる(高単価・少人数)

パーソナルのように単価の高い指導で、限られた枠の価値を最大化する道です。1人でも到達しうる反面、自分の稼働時間が天井になるため、単価を上げ続けられるかが勝負になります。

2. 店数を増やす(多店舗化)

1店の取り分が薄くても、店数で積み上げる道です。もっとも再現性がありますが、現場から離れる覚悟と、採用・育成・資金の力が要ります。

3. ストック収益を足す(養成・物販・オンライン)

指導以外の収益源を重ねる道です。ヨガの養成講座はその典型で、自分の時間を切り売りしない収益が乗ると、天井が一段上がります。

いずれの道も、共通するのは「自分の時間を切り売りする構造から抜ける」ことです。単価を上げるのは、同じ時間の価値を上げる方法。店を増やすのは、自分の時間を使わずに売上を作る方法。ストックを足すのは、時間と売上の紐付けを切る方法。どれも、時間の制約への答えです。フランチャイズに加盟して店数を増やす道もありますが、その場合はロイヤリティを引いた後で計算する必要があります(ジムのフランチャイズ加盟の判断)。

年収が伸びない・下がるパターン

年収が上がらないと相談を受ける店には、共通する型があります。売上が足りないのではなく、年収が生まれない構造になっていることがほとんどです。

現場を離れるのが早すぎる

1店の利益が薄いうちに指導者を雇うと、人件費だけが増えて自分の取り分が沈みます。1店が十分に回ってから離れる、という順序を逆にした失敗が最も多く見られます。

固定費を先に重くする

広い物件、良い立地、フル装備のマシン。開業時の高揚感で固定費を重くすると、損益分岐が遠のき、年収が生まれる地点が先に押しやられます。年収は売上でなく差額で決まります。

継続率を放置して集客だけ回す

解約が多いまま新規を追い続けると、広告費が利益を食い、会員数は横ばいのまま年収が上がりません。穴の空いたバケツに水を注ぐ形です。

値下げで会員を集める

単価を下げて会員を増やしても、固定費が同じなら手元に残る額は増えにくく、対応する手間だけが増えます。値下げは最後の手段で、年収を直接削る施策です。

いずれも「売上を増やす」方向の努力では解決しません。固定費・継続率・自分の立ち位置という、年収が生まれる構造そのものを直す必要があります。儲からないジムに共通する構造はジム経営で詳しく扱っています。

田舎・地方でジムを経営すると年収は下がるのか

地方でのジム経営は年収が低い、と決めつけるのは早いです。たしかに商圏人口が少ないぶん、会員数の上限は低くなります。都市部と同じ単価が受け入れられないことも多く、売上の天井は下がります。

一方で、年収を決めるのは売上ではなく売上と固定費の差でした。地方は最大の固定費である家賃が大きく下がります。都市部で月30万円かかる広さが、地方なら10万円で借りられることも珍しくありません。固定費が軽ければ損益分岐に届く会員数も小さくて済み、少ない会員でも利益が乗り始めます。競合が少ないぶん、その商圏で選ばれる位置を取りやすいという利点もあります。

数字で置くと分かりやすくなります。パーソナルジムを都市部と地方で開いた場合を、同じ物差しで並べます(仕組みを示すためのモデルです)。

条件 都市部 地方
月会費 25,000円 20,000円(単価は下がる)
会員数 30人 25人(商圏が小さい)
月商 75万円 50万円(△33%)
経費(家賃ほか) 26万円 16万円(家賃が軽い)
月の利益 49万円 34万円
年収の目安 約588万円 約408万円(△31%)

売上は33%落ちるのに、年収の落ち幅は31%に留まります。家賃という最大の固定費が軽いぶん、売上の目減りが年収にそのまま跳ね返らないためです。加えて、競合が少ない商圏であれば、その25人を埋めきれる場合もあります。商圏の人口と競合の数によるため一概には言えませんが、地方だから不利と決まっているわけではない、というのはこういう意味です。

注意すべきなのは、都市部のモデルをそのまま持ち込むことです。高単価のパーソナルを地方で同じ価格で売ろうとすると、単価が受け入れられず会員が集まりません。地方では、単価を落として会員数で積む形か、その地域に競合がいない専門性で単価を保つ形か、どちらかに寄せる判断が要ります。商圏で見込める会員数の上限を保守的に置き、家賃を含む固定費との差で年収を試算する。この順序を守れば、地方が不利とは限りません。

年収と手取りは違う|税金・借入返済・減価償却

ここまで示してきた金額は、売上から経費を引いた事業の利益(税引前)の水準です。生活費として使える手取りは、ここからさらに減ります。所得税・住民税・社会保険料が引かれ、開業資金を借りているなら返済も出ていきます。

設備投資の重い業態では、もうひとつ厄介な現象が起きます。減価償却は帳簿上の費用として利益を減らしますが、現金は出ていきません。逆に借入の元本返済は現金が出ていくのに費用になりません。この2つがずれるため、「利益は出ているのに現金がない」あるいは「赤字なのに現金は回っている」という状態が起こります。マシンやシミュレーターを抱える業態ほど、この差が大きくなります。年収の数字だけを見ず、毎月いくら現金が残るかで判断してください。

規模が出てくると、法人化して自分に役員報酬を払う形も選択肢に入ります。その場合、事業の利益がそのまま年収になるのではなく、自分で決めた役員報酬が年収になり、残りは会社に残ります。どちらが有利かは所得の水準と将来の投資計画によるため、税理士に相談して決めるのが確実です。

よくある質問

Q. ジム経営者の平均年収はいくらですか?

「ジム経営」でひとくくりにできる平均年収はありません。業態、オーナー自身が現場に立つか、固定費の重さ、店舗数で桁が変わるためです。当社が業態別に整理したモデルでは、独立して自分の店を持ち現場にも立つオーナーで、ピラティス約540万円、パーソナルジム約588万円、キックボクシング約684万円が目安です。指導を人に任せて経営に専念すると1店の取り分は大きく下がり、逆に多店舗化すれば約864万円以上も見えてきます。平均値を探すより、自分がどの業態でどう立つかで試算するほうが実態に近づきます。

Q. インストラクターの平均年収はいくらですか?なぜ媒体ごとに数字が違うのですか?

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、スポーツインストラクターの年収は442万円(令和7年賃金構造基本統計調査を加工)と示されています。一方で同じページに、ハローワークの求人賃金が月22.5万円(令和6年度)と並んでいます。後者は賞与を含まない月額なので、12倍しても270万円です。媒体ごとに240万円台から600万円台までばらつくのは、賞与を含むかどうか、在職者の実績か新規求人の提示額か、そして経験を積んだ層を含むかどうかが違うためです。さらに重要なのは、この統計の対象が事業所に雇われる労働者であり、業務委託で働く人や自分の店を持つオーナーは母集団に入っていない点です。独立後の年収と比べるための数字ではありません。

Q. インストラクターとして年収1,000万円に届きますか?

雇われの給与のままで届く形は多くありません。在職者の平均が442万円、平均年齢が38.3歳という水準からは、給与テーブルの延長線上に1,000万円を置くのは現実的でないためです。届くとすれば、指導の腕をさらに上げるというより、収入の作り方を変える形になります。客単価の高い指導で限られた枠の価値を最大化する、店数を増やして積み上げる、養成講座や物販などのストック収益を足す、という3つの経路です。いずれも自分の時間を切り売りする構造から抜ける形で、指導技術とは別の、経営の判断になります。

Q. ジム経営で年収1,000万円は可能ですか?

可能ですが、1店で現場に立ち続けたまま到達する形は多くありません。現実的な道は、客単価の高い指導で枠の価値を最大化する、店数を増やして積み上げる、養成講座や物販などのストック収益を足す、の3つです。多くの場合、1店の利益を厚くするだけでは天井に当たるため、店数か収益源のどちらかを増やす判断が必要になります。

Q. オーナーが現場に立つのと、経営に専念するのではどちらが年収は高いですか?

1店だけで見るなら、オーナーが現場に立つほうが年収は高くなります。指導を人に任せるとその人件費が利益から引かれるためです。当社のキックボクシングのモデルでは、兼トレーナー型で税引前約684万円、経営に専念して指導を雇うと1店の取り分は約204万円まで下がります。経営専念が有利になるのは、複数店舗を持ち、その合算で自分の時間の制約を超える場合です。

Q. 田舎・地方でのジム経営は年収が下がりますか?

売上は下がりやすい一方、家賃という最大の固定費も下がるため、年収が必ず低くなるとは限りません。地方は商圏人口が少なく会員数の上限が低くなりますが、競合も少なく、固定費が軽いぶん損益分岐に届く会員数も小さくて済みます。要点は、その商圏で見込める会員数の上限を保守的に置き、家賃を含む固定費とのバランスで判断することです。都市部の高単価モデルをそのまま持ち込むと、単価が受け入れられず苦戦します。

Q. 年収と手取りはどれくらい違いますか?

同じではありません。ここで示している年収は、売上から経費を引いた事業の利益(税引前)の水準で、ここから所得税・住民税・社会保険料、さらに借入があれば返済が出ていきます。設備投資の重い業態では減価償却と借入返済が数年にわたって効くため、帳簿上の利益が出ていても手元の現金が薄いという状態が起こります。生活費として使える額は、税金と返済を引いた後で見積もってください。

Q. 未経験からジムを開いても年収は上がりますか?

独立直後は、いったん下がるのが普通です。会員がゼロから積み上がるまで売上が立たない一方、家賃などの固定費は初月から出ていきます。多くの業態で、損益分岐に届くまで数か月から1年ほどかかり、その間の赤字を運転資金で食いつなぐ形になります。年収が勤務時代を超えるのはその後です。この「V字」を織り込まずに開業すると、資金が尽きて年収の話にたどり着けません。

平均を探すのをやめて、4つの変数で自分の年収を置く

ジム経営の年収は、業態・自分が現場に立つか・固定費・店舗数の4つでほぼ決まります。同じ「独立オーナー」でも、ヨガの1人運営で約400万円、キックボクシングの兼トレーナー型で約684万円と1.7倍の差が出るのは、この変数が違うからです。平均値を探すより、自分がどの業態で、どう立ち、いくらの固定費を背負い、何店を持つのかを置いて試算するほうが、はるかに実態に近づきます。そして年収が生まれるのは損益分岐を超えてから。まずは自分の店の分岐点が何人かを知ることが、年収の話の出発点です。

注記

  • 本ページの年収の金額は、当社が業態別に会員数・客単価・固定費から逆算して整理したモデルケースの目安であり、特定の店舗の実績や、将来の収益を予想・保証するものではありません
  • 金額は原則として税引前(売上から経費を引いた事業の利益)の水準です。手取りは、ここから所得税・住民税・社会保険料と、借入がある場合の返済を差し引いた後になります
  • 年収は業態・立地・商圏・客単価・稼働率・固定費・店舗数・オーナーの働き方で大きく変わります。実際の判断は、自店の商圏で見込める会員数を保守的に置いて試算してください
  • 業態別の詳しい内訳(会員数別の収支・客単価・天井の作り方)は、各業態の年収ページで確認できます
  • 雇われのインストラクターの賃金は、厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「スポーツインストラクター」(職業詳細・2026年7月28日取得)を参照しています。年収442万円・時間当たり賃金2,142円/1,687円・平均年齢38.3歳・労働時間165時間は令和7年賃金構造基本統計調査を加工した値、求人賃金(月額)22.5万円・有効求人倍率1.17は令和6年度ハローワーク求人統計データ、就業者数120,470人は令和2年国勢調査を加工した値です
  • 年収442万円は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出された額面で、対象は事業所に雇われる一般労働者です。業務委託で働く人や自分の店を持つオーナーは母集団に含まれないため、独立後の取り分と直接比較することはできません。また job tag は、各職業に掲載している統計の職業分類が必ずしもその職業のみを表すものではないと注記しています
  • 「平均年収として240万円台から600万円台までの記載が並んでいた」は、当社が2026年7月28日に主要な求人・転職メディアおよび養成校の記事6本を実際に確認し、各媒体が掲載していた額をそのまま拾ったものです。各媒体が示す額そのものの妥当性を当社が検証したものではありません
  • 雇われのインストラクターの年収として本ページに記載している約200〜400万円台の水準は、求人情報や業界調査で示される一般的な目安であり、特定の統計値の引用ではありません。雇用形態・歩合・地域により幅があります